
相続税対策で知っておきたい不動産評価の減額方法とは?具体的な減額ポイントも紹介
公開日:2026年10月27日 更新日:2026年10月27日
相続税対策として「不動産を持つと評価額が下がる」と聞いたことはありませんか。結論から言うと、不動産は現預金よりも相続税評価額が低くなりやすく、さらに特例や補正を正しく使うことで評価額を大きく下げられる場合があります。
ただし、不動産の評価には独自のルールが多く、要件を一つ見落とすだけで特例が使えなくなることもあります。また、評価の考え方は土地の場所や使い方によって変わるため、掛川市・菊川市・袋井市など地方都市の土地には、大都市とは異なる基準が当てはまる点にも注意が必要です。
この記事では、不動産の評価が下がる仕組み、小規模宅地等の特例、広い土地や形の悪い土地の補正、申告後の見直し方法まで、相続税対策を考えている方が知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 土地・建物の相続税評価の基本と、賃貸で評価が下がる仕組み
- 小規模宅地等の特例・規模格差補正など、評価額を下げる具体的な制度
- 申告後に評価を見直す「更正の請求」と「修正申告」の違い
よくある質問(目次)
Q1.不動産を持っていると相続税の評価額は下がりますか?
A.一般的に、不動産は現預金より相続税評価額が低くなりやすい財産です。土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価し、賃貸中ならさらに評価が下がります。
Q2.小規模宅地等の特例を使うと、どのくらい評価額が減りますか?
A.自宅の敷地(特定居住用宅地等)は330㎡まで80%、アパートや駐車場など賃貸用の敷地(貸付事業用宅地等)は200㎡まで50%減額できます。適用には取得者の要件と相続税の申告が必要です。
Q3.掛川市にある広い土地や形の悪い土地は、評価額が下がりますか?
A.下がる可能性があります。掛川市は三大都市圏に含まれないため、1,000㎡以上などの要件を満たす土地は「地積規模の大きな宅地」として規模格差補正率を使え、不整形地補正などとも併用できます。
Q4.相続税の申告後に評価が高すぎたと気付いたら、どうすればよいですか?
A.相続税の申告期限から原則5年以内であれば「更正の請求」を行い、納めすぎた税金の還付を求めることができます。逆に税額が不足していた場合は「修正申告」が必要です。
不動産を活用して相続税評価額を下げる基本の仕組み
不動産は、現預金のように額面どおりではなく、国税庁の「財産評価基本通達」に沿って評価します。そのため、同じ金額の財産でも、現預金より不動産のほうが評価額が低くなるケースが多くあります。
- 土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価する
- 土地の形や間口・奥行などのマイナス要因は、補正率で評価額に反映される
- 賃貸中の土地・建物は、借地権割合や借家権割合を使ってさらに評価が下がる
詳しく解説していきます!
土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価する
不動産の相続税評価額は、時価(実際の売買価格)より低くなるのが一般的です。土地と建物で評価方法が異なるため、それぞれ確認しましょう。
1.路線価方式:道路ごとに定められた1㎡あたりの価格(路線価)×面積×各種補正率で計算します。
2.倍率方式:路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額×国税庁が定める倍率で計算します。
3.建物:自分で使っている建物は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。
所有する土地がどちらの方式で評価されるかは、国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
土地の形や道路との接し方が悪いと、補正で評価額が下がる
路線価方式では、土地の個別事情を「補正率」として評価に反映させます。形や道路との接し方に難がある土地ほど評価額が下がるため、現地の状況を正しく確認することが大切です。
1.奥行価格補正:奥行が極端に短い・長い土地の評価を調整します。
2.間口狭小補正・奥行長大補正:道路に接する間口が狭い土地や、間口に比べて奥行が長すぎる土地の評価を下げます。
3.不整形地補正・がけ地補正:旗竿地などの形がいびつな土地や、がけ地を含む土地の評価を下げます。
図面だけでは分からない高低差や道路の状況が評価に影響することもあるため、建物や土地に詳しい専門家と一緒に現地を確認するのがおすすめです。
賃貸している土地・建物は、借地権割合や借家権割合でさらに評価が下がる
アパートや貸家として人に貸している不動産は、借りている人の権利がある分、自分で使っている不動産より評価額が下がります。
1.貸家(建物):固定資産税評価額×(1-借家権割合30%×賃貸割合)で評価します。満室であれば、建物の評価額は3割下がります。
2.貸家建付地(土地):自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で評価します。たとえば借地権割合が50%の地域で満室なら、50%×30%で土地の評価額は15%下がります。
3.借地権割合は地域ごとに路線価図で定められています(30%〜90%)。所有する土地の割合を確認したうえで効果を見積もりましょう。
なお、相続の直前に多額の借入れをして不動産を購入するなど、相続税を減らすことだけを目的とした行き過ぎた対策は、通達どおりの評価が認められず、時価で課税された例(令和4年4月19日の最高裁判決)もあります。賃貸活用は、収益性や将来の管理まで含めて検討しましょう。
小規模宅地等の特例を活用した評価額の大幅減額
相続税の評価額を下げるうえで、最も効果が大きい制度の一つが「小規模宅地等の特例」です。亡くなった方の自宅や事業用の土地について、一定の面積まで評価額を大きく減らせます。
- 自宅の敷地(特定居住用宅地等)は330㎡まで80%減額できる
- 賃貸用の敷地(貸付事業用宅地等)は200㎡まで50%減額できる
- 特例で税額がゼロになる場合でも、相続税の申告書の提出が必要
詳しく解説していきます!
自宅の敷地は330㎡まで評価額を80%減額できる
亡くなった方が住んでいた自宅の敷地は、要件を満たす親族が取得すると、330㎡までの部分について評価額が80%減額されます。たとえば評価額5,000万円・200㎡の自宅の土地なら、減額後の評価額は1,000万円になります。
1.配偶者が取得する場合:居住の継続や保有の要件はありません。
2.同居していた親族が取得する場合:相続税の申告期限まで、その家に住み続け、土地を保有し続けることが必要です。
3.同居していない親族が取得する場合:配偶者や同居親族がいないなど、一定の要件をすべて満たしたときに限り対象になります(いわゆる「家なき子」の特例)。
アパートや駐車場の敷地は200㎡まで評価額を50%減額できる
アパートや月極駐車場など、賃貸に使っていた土地は、200㎡までの部分について評価額が50%減額されます。
1.土地を取得した親族が貸付事業を引き継ぎ、相続税の申告期限まで事業を続けて、土地を保有し続けることが必要です。
2.相続開始前3年以内に新たに貸し付けを始めた土地は、原則として対象外です。ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業(特定貸付事業)を行っていた場合は対象になります。
3.自宅や事業用の土地と組み合わせて特例を使う場合は、限度面積の調整計算が必要です。
特例を使うには、相続税の申告と期限内の遺産分割が必要
小規模宅地等の特例は、相続税の申告書に特例の明細を記載して提出しなければ適用されません。特例を使った結果、納める税額がゼロになる場合でも申告は必要です。
1.相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
2.特例を使うには、原則として申告期限までに遺産分割を済ませ、誰がどの土地を取得するか決まっている必要があります。
3.期限までに分割がまとまらない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後から分割が決まった時点で特例を適用できます。
規模格差補正や形状による補正を活用する
面積が広い土地や、形が悪く使いにくい土地は、その分の価値の低さを評価額に反映できます。掛川市のような地方都市では、大都市圏と面積の基準が異なる点に注意が必要です。
- 面積が広い土地は「地積規模の大きな宅地」として規模格差補正率を使える
- 掛川市は三大都市圏に含まれないため、対象は原則1,000㎡以上の土地
- 規模格差補正は不整形地補正など形状による補正と併用できる
詳しく解説していきます!
「地積規模の大きな宅地」に当たる広い土地は評価額が下がる
広い土地は、宅地として分けて売る際に道路をつくる必要があるなど、1㎡あたりの価値が下がる傾向があります。この実態を反映するのが「地積規模の大きな宅地の評価」です。
- 面積の基準
- 三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上。掛川市・菊川市・袋井市は三大都市圏に含まれないため、1,000㎡以上が基準です。
- 対象外となる土地
- 市街化調整区域(一定の開発が認められる区域を除く)、工業専用地域、指定容積率400%以上の地域にある土地などは対象外です。
- 対象となる地区
- 路線価地域では「普通住宅地区」「普通商業・併用住宅地区」にある土地が対象です。倍率地域の土地も、要件を満たせば対象になります。
規模格差補正率で、評価額はおおむね2割以上下がる
要件を満たす土地は、通常の評価額に「規模格差補正率」を掛けて評価します。補正率は、面積に応じた算式で求めた数値に0.8を掛けて計算するため、最も小さい面積区分でも評価額が2割下がり、面積が大きくなるほど減額幅が広がります。
補正率は小数点以下第2位未満を切り捨てるなど、計算に細かいルールがあります。正確な数値は、国税庁の資料に沿って税理士に計算してもらいましょう。
形の悪い土地は、規模格差補正と組み合わせてさらに評価を下げられる
規模格差補正は、奥行価格補正・不整形地補正・がけ地補正などの形状による補正と併用できます。広くて形もいびつな土地であれば、複数の補正を重ねて評価額をさらに下げられる可能性があります。
- 旗竿地・不整形地
- 不整形地補正や間口狭小補正・奥行長大補正の対象になる場合があります。
- 道路に接していない土地
- 無道路地として評価額を減額できる場合があります。
- 傾斜地・がけ地を含む土地
- がけ地補正の対象になる場合があります。
どの補正が使えるかは、土地の形状だけでなく、道路の種類や高低差など現地の状況によって決まります。補正の根拠を整理するためにも、専門家と一緒に確認しましょう。
相続税評価の見直し方法と注意点
不動産の評価は、通達どおりに計算しても実際の価値を上回ってしまうことがあります。申告の前後で評価を見直す方法と、それぞれの注意点を押さえておきましょう。
- 通達による評価が時価を上回る場合は、不動産鑑定士の鑑定評価を使う方法がある
- 評価が高すぎたときは、申告期限から原則5年以内に「更正の請求」ができる
- 税額が不足していたときは、税務調査の通知前に自主的に「修正申告」を行う
詳しく解説していきます!
通達の評価が時価を上回るときは、不動産鑑定評価を検討する
路線価などによる通達評価は、多くの土地を簡便・画一的に評価するための方法です。そのため、特殊な事情がある土地では、通達評価が実際の価値(時価)を上回ることがあります。その場合は、不動産鑑定士による鑑定評価額で申告する方法があります。
1.税理士:通達に沿った評価と相続税申告全体を担当します。まず税理士に相談し、鑑定評価が必要か判断してもらうのが一般的です。
2.不動産鑑定士:個別の減価要因を詳しく調べ、鑑定評価書を作成します。
3.注意点:鑑定評価額が必ず税務署に認められるわけではなく、鑑定費用もかかります。費用と見込まれる効果を比べて判断しましょう。
評価が高すぎたときは「更正の請求」で還付を求められる
申告後に評価が過大だったと気付いた場合は、相続税の申告期限から原則5年以内に「更正の請求」を行うことで、納めすぎた税金の還付を求められます。
1.原則の期限:相続税の申告期限から5年以内(相続開始からおおむね5年10か月以内)です。
2.特則:遺産分割がまとまった、遺留分侵害額の請求を受けて支払いが確定した、遺言書が見つかったなど一定の事由が生じた場合は、その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に請求できます。
3.なお、税務署から受けた更正などの処分に不服がある場合は、「更正の請求」ではなく「再調査の請求」や「審査請求」という別の手続きになります。
税額が不足していたときは、早めに「修正申告」を行う
申告後に財産の漏れや評価の誤りで税額が不足していると分かった場合は、「修正申告」を行い、不足分を納めます。
1.税務調査の通知を受ける前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません。
2.通知を受けた後や調査で指摘された後の修正申告では、加算税がかかります。
3.加算税がかからない場合でも、納付が遅れた期間に応じて延滞税がかかることがあります。
まとめ
相続税対策では、不動産の評価の仕組みと特例を正しく理解し、要件を満たした形で申告することが大切です。この記事のポイントを振り返ります。
- 不動産は現預金より評価額が低くなりやすく、賃貸中の土地・建物はさらに評価が下がる
- 小規模宅地等の特例は、自宅の敷地330㎡まで80%、賃貸用の敷地200㎡まで50%の減額
- 掛川市では1,000㎡以上などの要件を満たす広い土地に規模格差補正率を使え、形状の補正とも併用できる
- 評価が高すぎた場合は申告期限から原則5年以内に更正の請求、不足していた場合は早めに修正申告
一方で、相続税を減らすことだけを目的にした行き過ぎた対策は、税務署に否認されるリスクがあります。不動産をどう持ち、どう引き継ぐかは、家族の暮らしや将来の活用まで含めて考えることが重要です。
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監修:原田 連央(株式会社結不動産 代表/一級建築士・空き家相談士)
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