
共有名義の実家相続で悩む人へ!持分売却の方法と名義整理の進め方
公開日:2026年10月31日 更新日:2026年10月31日
親が住んでいた実家を相続したものの、兄弟姉妹との共有名義になっていて、自分の持分をどうするか悩んでいませんか。相続放棄をすべきか、名義整理を優先すべきかは、共有名義の仕組みや売却方法を正しく理解していないと判断を誤りやすいポイントです。
結論から言うと、まず「相続放棄をするのか、相続して売却や名義整理を進めるのか」の方針を決めることが最も大切です。相続放棄を考えているのに持分を売却してしまうと、相続を承認したものとみなされ、放棄ができなくなるためです。
この記事では、共有名義と相続放棄の基本から、共有名義の実家を売却する3つの方法、名義整理の進め方、税金と相談のタイミングまで、順を追ってわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 共有名義・共有持分の仕組みと、相続放棄をした場合の扱い
- 共有名義の実家を売却する3つの方法と、それぞれの注意点
- 相続登記の義務化をふまえた名義整理の進め方と、売却時の税金
よくある質問(目次)
Q1.相続放棄をすると、共有名義の実家の持分はどうなりますか?
A.相続放棄をすると初めから相続人でなかったものとみなされ、実家の持分は取得しません。持分は他の相続人などに引き継がれます。放棄は実家だけを選べず、預貯金なども含めたすべての財産が対象で、原則として相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
Q2.共有名義の実家を売却するには、どんな方法がありますか?
A.共有者全員の同意を得て実家全体を売却する方法、自分の持分だけを売却する方法、共有者間で持分を集めて単独名義にしてから売却する方法の3つが基本です。高く売れやすいのは、全員の同意を得て実家全体を売却する方法です。
Q3.相続放棄を考えている場合、持分を先に売却してもよいですか?
A.相続放棄を考えているなら、持分の売却などの処分はしてはいけません。相続財産を処分すると相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなります。放棄するか、相続して売却・名義整理を進めるかを先に決めることが大切です。
Q4.共有名義の実家を売却すると、どんな税金がかかりますか?
A.売却で利益が出た場合は、共有者ごとに譲渡所得税と住民税がかかります。相続した不動産は親の取得時期と取得費を引き継ぐため、購入時の資料を確認しておきましょう。親族間で持分を安く移す場合は贈与税にも注意が必要です。
共有名義の実家と相続放棄の基本を整理する
共有名義の実家をどうするか考える前に、共有名義の仕組みと、相続の3つの方法の違いを押さえておきましょう。
- 共有持分は「部屋」ではなく、1つの不動産に対する権利の割合
- 相続放棄をすると、実家の持分を含めて一切の財産を引き継がない
- 名義を放置すると共有者が増え、売却や活用が難しくなる
詳しく解説していきます!
共有持分は「部屋」ではなく、権利の割合のこと
共有名義とは、1つの不動産を複数人で所有している状態のことで、それぞれの権利の割合を「共有持分」といいます。持分は「1階は兄、2階は弟」のような物理的な区分ではなく、あくまで権利の割合です。
1.遺産分割前:遺産分割が終わるまでは、相続人全員が法定相続分などの割合で実家を共有している状態になります。
2.放置した場合:遺産分割や相続登記をしないままにしておくと、実家が兄弟姉妹など複数人の共有のまま残ります。
3.遺産分割後:話し合いで共有にすると決めた場合も、共有名義の状態が続きます。
相続放棄をすると、実家の持分を含めて一切の財産を引き継がない
相続人は、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つから相続の方法を選べます。
- 単純承認
- 預貯金や不動産などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産もすべて引き継ぎます。共有名義の実家については、自分の持分を取得します。
- 限定承認
- 相続で得た財産の範囲内でのみ借金を返済することを条件に相続します。相続人全員で共同して家庭裁判所に申し立てる必要があります。
- 相続放棄
- 初めから相続人でなかったものとみなされ、実家の持分も取得しません。実家だけを放棄することはできず、すべての財産が対象です。原則として、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
名義を放置すると共有者が増え、売却や活用が難しくなる
親名義や共有名義のまま実家を長く放置すると、その間に次の相続が起きて共有者がねずみ算式に増え、権利関係が複雑になるおそれがあります。法務省も、相続登記をしないまま放置することへの注意を呼びかけています。
1.手続きが進まない:売却や賃貸には共有者の関与が必要になり、連絡の取れない人が1人いるだけで進まなくなることがあります。
2.負担だけが続く:使わない実家でも、固定資産税や管理の負担は続きます。
3.次の世代の負担:相続登記の義務化のもとで、子や孫の世代がより複雑な手続きと調整を迫られる可能性があります。
共有名義の実家を売却する3つの基本パターン
共有名義の実家を売却する方法は、大きく3つに分けられます。それぞれのメリットと注意点を比べて、家族の状況に合った方法を選びましょう。
- 共有者全員の同意を得て、実家全体を売却する
- 自分の持分だけを売却する
- 共有者間で持分を集めて単独名義にしてから売却する
詳しく解説していきます!
共有者全員の同意を得て、実家全体を売却する
最も一般的で、高く売れやすいのが、共有者全員の同意を得て実家全体を売却する方法です。民法では、共有している不動産の売却には共有者全員の同意が必要とされています。
1.契約の方法:共有者全員が売買契約書に署名・押印するか、代表者に委任してまとめて契約・決済を行います。
2.窓口を決める:共有者が多い場合は、早い段階で意向を確認し、誰が窓口になるかを話し合っておくとスムーズです。
3.注意点:全員の合意形成や、契約・決済の日程調整に時間がかかることがあります。
自分の持分だけを売却する
共有持分は、他の共有者の同意がなくても、自分の判断で第三者に売却できます。
1.メリット:他の共有者が売却に反対していても、自分の持分を手放せます。
2.価格の注意点:持分だけを買っても不動産を自由に使いにくいため買い手が限られ、実家全体の価格に持分割合を掛けた金額より低くなることが一般的です。
3.関係の注意点:持分の買取業者などに売却すると、他の共有者と買主との間で調整が必要になり、家族間のトラブルにつながることがあります。
共有者間で持分を集めて単独名義にしてから売却する
共有状態を解消してから売却する方法もあります。共有者の1人が他の共有者の持分を買い取って単独名義にする方法や、遺産分割で1人が実家を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法(代償分割)が代表的です。
1.メリット:単独名義にすることで、売却や活用の方法を自由に選びやすくなります。
2.資金の注意点:持分を買い取る人や代償金を支払う人には、まとまった資金が必要です。
3.評価の注意点:実家の時価や代償金の額、税金の扱いを確認したうえで、話し合いの内容を整理することが大切です。
相続放棄を検討している方の持分売却・名義整理の進め方
相続放棄を検討している場合は、手続きの順番を間違えると取り返しがつかなくなることがあります。まず方針を決め、そのうえで名義整理を進めましょう。
- 相続放棄を考えているなら、持分の売却などの処分をしてはいけない
- 相続した場合は、相続登記の義務化をふまえて期限内に名義を整理する
- 話し合いがまとまらない場合は、裁判所の手続きで共有状態を解消できる
詳しく解説していきます!
相続放棄を考えているなら、持分の売却などの処分をしてはいけない
相続放棄を検討している方が最も注意すべきなのは、相続財産を処分すると相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなることです。実家の持分を売却することも、この「処分」にあたります。
1.方針を先に決める:「相続放棄をする」のか、「相続したうえで持分の売却や名義整理を進める」のかを、まず決めます。
2.財産の全体像を確認する:借金などのマイナスの財産も含めて調べ、放棄すべきかどうかを判断します。期限内に判断が難しい場合は、家庭裁判所に期間の延長を申し立てられることがあります。
3.放棄後の管理:相続放棄をしても、放棄した時点で実家を実際に使っていた場合は、次の管理者に引き渡すまで保存する義務が残ります。
相続した場合は、相続登記の義務化をふまえて期限内に名義を整理する
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
1.過去の相続:令和6年4月1日より前に発生した相続も対象で、原則として令和9年3月31日までに登記が必要です。
2.罰則:正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料の対象になります。
3.すぐに分割できない場合:遺産分割がまとまらないときは、自分が相続人であることを法務局に申し出る「相続人申告登記」で、ひとまず義務を果たすことができます。
共有名義を解消するには、相続登記で名義を現状に合わせたうえで、持分の買取りや持分移転の登記などの手続きを組み合わせて進めるのが一般的です。
話し合いがまとまらない場合は、裁判所の手続きで共有状態を解消できる
共有者同士の話し合いがまとまらない場合は、最終的に裁判所の手続きで共有状態を解消する方法があります。どの手続きを使うかは、遺産分割が済んでいるかどうかで変わります。
- 遺産分割が済んでいない場合
- 家庭裁判所の遺産分割調停を利用し、まとまらなければ審判で分け方が決められます。
- 遺産分割後も共有になっている場合
- 地方裁判所などに共有物分割訴訟を起こし、裁判所に分割方法を決めてもらいます。
- 注意点
- 裁判所の手続きは長期化しやすく、弁護士費用などもかかります。家族関係への影響も大きいため、まずは話し合いでの解決を目指しましょう。
共有名義の実家売却で押さえたい税金・費用と相談のタイミング
共有名義の実家を売却したり、持分を移したりする場合は、税金や登記の費用がかかります。どんな税金がかかるかを事前に確認し、早めに専門家へ相談しましょう。
- 売却で利益が出れば、共有者ごとに譲渡所得税と住民税がかかる
- 親族間で持分を移す場合は、贈与税・登録免許税・不動産取得税に注意する
- 方針に迷っている段階こそ、税務と登記の両面から相談するタイミング
詳しく解説していきます!
売却で利益が出れば、共有者ごとに譲渡所得税と住民税がかかる
実家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、共有者それぞれに、持分に応じて譲渡所得税と住民税がかかります。
1.譲渡所得の計算:売却代金から、取得費と売却にかかった費用を差し引いた金額が譲渡所得になります。
2.取得時期と取得費:相続した不動産は、親が購入した時期と金額を引き継ぎます。購入時の契約書などが見つからない場合、取得費は売却代金の5%とみなして計算されるため、資料をできる限り探しておきましょう。
3.税率:売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで税率が変わります。相続の場合は、親の所有期間を含めて判断します。
なお、一定の要件を満たす空き家となった実家を売却する場合は、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」を使える可能性があります。共有者の人数によって控除額が変わるため、売却前に税理士に確認しましょう。
親族間で持分を移す場合は、贈与税・登録免許税・不動産取得税に注意する
共有者の1人が他の共有者の持分を買い取る場合など、親族間で持分を移すときは、売買・贈与・相続のどれにあたるかで税金が変わります。
1.贈与税:持分の対価が時価に比べて著しく低いと、差額が贈与とみなされる可能性があります。適正な評価額を参考にしましょう。
2.登録免許税:名義を変更する登記には登録免許税がかかり、相続か売買・贈与かで税率が異なります。
3.不動産取得税:相続による取得にはかかりませんが、売買や贈与で持分を取得した場合などにはかかることがあります。
方針に迷っている段階こそ、税務と登記の両面から相談するタイミング
相続放棄を検討している方や、共有名義のまま実家を放置している方は、方針に迷っている段階で早めに専門家へ相談することが大切です。
1.相続放棄の期限:放棄するかどうかは、原則として3か月以内に判断する必要があります。
2.共有者の増加:時間がたつほど共有者が増えて意思統一が難しくなり、必要な書類や手続きも増えます。
3.全体の見通し:「誰がどのくらいの持分を持っているか」「売却・買取・贈与のどれにするか」を、税金と登記の両面から整理すると判断しやすくなります。
まとめ
共有名義の実家は、放置すると売却や活用、次の相続で大きな負担になります。この記事のポイントを振り返ります。
- 共有持分は権利の割合で、相続放棄をすると実家を含む一切の財産を引き継がない
- 共有名義の実家の売却は、全体の売却・持分だけの売却・単独名義にしてからの売却の3つが基本
- 相続放棄を考えているなら持分を売却せず、相続した場合は期限内に相続登記を行う
- 売却では共有者ごとに譲渡所得税がかかり、親族間の持分移転は贈与税にも注意する
相続放棄をするか、相続して売却や名義整理を進めるかで、できることは大きく変わります。家族で早めに方向性を話し合い、1人で抱え込まずに専門家に相談しましょう。
掛川市の共有名義・相続不動産のご相談は株式会社結不動産へ
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監修:原田 連央(株式会社結不動産 代表/一級建築士・空き家相談士)
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